社会で働いている人のほとんどは、企業へ勤めてその対価としてお給料を毎月いただいています。
そんな世の中に数多くある企業の中で、自分が勤めている企業の数字を把握しておくことは、実は従業員にとって、とても大切なことです!
今回は、自分がその会社の従業員として知っておきたい自社の財務分析についてご紹介します。
◇目次◇
自社の数字をさっと言える?
経理や財務、経営企画や経営層(経営層は知らないと困るが・・・)であれば、自然と数字に触れることもあるため答えられる人が多いでしょう。
しかし、日常的に企業全体の数字に触れない人は、数字自体に興味がないかもしれません。
ただそれではせっかく企業へ勤めているのに、その企業の数字や強みを知らないなんてもったいないです。
企業が毎年成長しているのかや、キャッシュはきちんと貯められているのかなどを知ることもないと、実は企業が経営難に陥っている可能性があるのにそれに気がつかず、早期退職などでその企業に勤めていられないなんてこともあり得ます。
転職するケースが現代では急増していますが、それでも一つの企業で安定して長く勤めていたいという人もまだまだ多いはず。
自社の数字を常に把握しておくことで、「何かおかしいな・・」と感じた時に、事前に自己防衛をはかることも可能となってきます。
自分を守るためにも、しっかりと勤めている企業の数字は知っておきましょう。
自社数字を知るためにやるべきこと
それでは、自社の数字を知るためには、具体的に何をして情報を得れば良いのでしょうか。
大きく4つのポイントをご紹介します。
自社HPで情報を得る

上場している企業であれば、自社にIR情報として投資家向けに売上高や営業利益などを載せています。
投資家用となっていても、そこから全社的な売上や、セグメントごとの情報も手に入れることができるでしょう。
経理や経営企画、経営層から情報を得る

企業に勤めているのならば、経理や経営企画など、直接数字に携わっている人に聞いてしまいましょう!
外部には公表していない、より細かい情報を得ることができます。
また、数字には直接的に関係しませんが、歴史のある会社のこれまでの移り変わりなどについては、できるだけ社歴の長い人に聞いても良いでしょう。
昔あったことなど貴重な話が聞ける機会となり、今後に再び生かせることがあるかもしれません。
有価証券報告書や決算短信などから情報を得る

企業HPに、独自でIR情報として売上高や営業利益などを載せている企業は多いですが、上場企業の場合は、金融商品取引法によって、事業年度終了後3ヶ月以内に有価証券報告書の作成・提出が義務付けられています。
公表するにあたり、監査法人という公平な第三者からの監査を受けての提出となるため、信用性の高い情報となります。(粉飾などによって事件も起こっていますが、これは極めて例外です。)
これは、企業HPからも取得できますし、EDINETという金融庁で公表されている全上場企業の有価証券報告書等を見ることができるサイトからも取得できます。
また、決算短信は、証券取引所のルールに則り決算日後45日以内に開示することととされている決算速報です。(30日以内公表がさらに望ましいとされています。)
株価情報が乗っているサイトや本を見る

ネットでいえばYahoo!ファイナンスや各証券会社のサイト。
本でいえば、四季報などの情報雑誌でも企業情報を入手することができます。
投資家視点としての数字が出されていますが、ひと目で数値がわかりやすいように作られているものが多く、同業他社比較などにも使用することができます。
これら以外にも、情報社会と呼ばれる現代では知る術がありますが、広げすぎても収集しきれなくなるため、このあたりから拾うのがよいでしょう。
情報を得た上で、4視点分析をする
一通り情報を収集したら、ようやく財務分析を行います。
見ていく視点は4つに分かれており、安全性・効率性・収益性・成長性に分類されます。
今回は、任天堂の過去の数字を有価証券報告書から抜粋したものを各分析の参考としてしようしました。
安全性分析
社内分析であれば、まずは自分の企業にどのくらい財力があるのかを確認しましょう。
具体的には、自己資本比率や有利子負債を見て行きます。
自己資本比率
下記のデータは任天堂の過去18年分の自己資本比率を表にしたものです。
参照:任天堂過去有価証券報告書より数値抜粋して作成
一般的には50%以上あればよいとされていますが、自社のこれまでの自己資本比率を見ることで、増加傾向にあるのか・減少傾向にあるのか・ほぼ同じなのかを見て行きましょう。
そして、企業の経営方針と矛盾する点はないかなどについても確かめるのもよいでしょう。
有利子負債
次に、有利子負債を見て、返済しなければならない負の財産がどのくらい保有されているのかを確認しましょう。
負の財産とは言っても、会社経営をしていく上では資金調達の手段として借入や社債の発行は必要なものです。
会社の現在のステージによって多くないか、少なすぎないかを考えて行きましょう。
効率性分析
効率性分析では、会社の総資産で売上が効率よくあげられているかを見て行きます。(総資産利益率)
参照:任天堂過去有価証券報告書より数値抜粋して作成
収益性分析
収益性分析では、会社の売上推移や、経常利益の推移、EPSについて見て行きます。
売上高および経常利益率
投資家や学生の財務分析では営業利益をみればよいと思いますが、社員の場合は、営業外損益も考慮した利益を見て行きます。(最終的にキャッシュを見ていくには税引後利益となります。)
参照:任天堂過去有価証券報告書より数値抜粋して作成
一株あたり当期純利益(EPS)
また、一株あたり当期純利益EPSも見て行きましょう。
投資家が見るケースが多いですが、従業員としても持株を所有していることもありますし自分の会社の株価と利益が見合っているのかを知るための材料となります。
参照:任天堂過去有価証券報告書より数値抜粋して作成
成長性分析
最後の成長性分析では、先ほどの売上高・経常利益の変遷やキャッシュ見ていくことによって、しっかりと伸びている会社なのかを確認して行きましょう。
売上高及び経常利益率(長期)
参照:任天堂過去有価証券報告書より数値抜粋して作成
出来るだけ長期の推移を見ることによって、会社がこれまでどのように成長してきたかを知ることができます。
特に売上や利益が大きく変化している年は、何があったのかなど昔からいる社員の方に聞いてみるのも良いでしょう。
キャッシュ推移
参照:任天堂過去有価証券報告書より数値抜粋して作成
キャッシュの推移を見ることによって、現在のキャッシュは妥当なのかを判断する材料としても使用できます。
また、ここでも大きく変化している年は、大きなものに投資をしたのか、販売した商品の売れ行きが良かったのか、借り入れをしたのかなどを考えることができます。
従業員推移
会社の移り変わりを見ていく上で、従業員数も見ていくと規模感なども実感しやすいかと思います。
参照:任天堂過去有価証券報告書より数値抜粋して作成
まとめ
企業へ就職するにあたり、自分がどんな企業で働きたいのかを考え、その企業はどんな会社なのかについて調べる人も多いはずです。
企業へ入社したとして、毎期継続的に会社の業績や経営体制を気にし続ける人はどれくらいいるでしょうか。
気にしている人はいるかもしれませんが、日々の業務に忙しくしていると、どうしても会社の数字に興味を持てなくなる人も少なくはないかと思います。
4視点で財務分析を行うことによって、自分の会社について知れば、今後どんな風に成長して行くのか自分で仮説を立てることができるようになります。
これを元に、今後もその会社に在籍をして企業と一緒に「今後こうなりたい!」という希望や、気づきを得て積極的に改善のための考えを持てるようになったり、仕事へモチベーションにもつながるかもしれませんよ。
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